12月23日に令和5年度税制改正大綱が閣議決定された。大綱では令和5年10月1日より始まる消費税のインボイス制度における免税事業者への軽減措置として、免税事業者がインボイス発行事業者登録(インボイス発行事業者の登録をすると課税事業者となる)を実施した場合、3年間に限り消費税の納税額を売上高にかかる消費税額の2割とすることが謳われている。また、一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置として、インボイス制度への円滑な移行とその定着を図る観点から、基準期間における課税売上高が1億円以下である事業者については、インボイス制度の施行から6年間、1万円未満の課税仕入れについて、インボイスの保存がなくとも帳簿記載のみで仕入税額控除を可能とするとされている。

 免税事業者を課税事業者へ誘導するような姑息な手段である

 免税事業者を多く抱える様々な業界から寄せられる要望として、取引排除、値引強要さらには課税負担に耐えうる資力確保(担税力が低い)への不安から、インボイス制度の中止が求められている。しかし、今回の「激変緩和措置」では免税事業者のままでは取引排除や値引強要があるといった免税事業者が抱える問題の解消には全くなっておらず、あくまでも制度そのものの導入に関する軽減措置としての位置づけに過ぎない。これでは零細な免税事業者は廃業を検討せざるを得ない(声優・アニメ・演劇・漫画といった文化事業に携わる団体の報告では、業界の半数以上が年収300万円以下で、そのうちの約2割の個人事業主が制度が実施されれば廃業を検討しているという)。免税事業者を多く抱える業界からの要望は制度の中止(少なくとも延期)であり、免税事業者の生業や生活、さらには将来の若い担い手の成長を守ってほしいということである。
 こうした要望に応えるのではなく、登録事業者となってもしばらくは優遇するといった免税事業者の課税事業者化への呼び水としての「激変緩和措置」は、免税事業者を騙す姑息な手段である。

 事業者の事務負担は軽減されない

 消費税の増税や今回のインボイス制度の導入で、消費税の申告納税が必要となる事業者の事務負担は明らかに増大している。消費税導入当初の平成元年に、当時の竹下登元首相は消費税についての「6つの懸念」を挙げている。そのうちの一つが「新しい税の導入により事業者の事務負担が極端に重くなるのではないか」である。今回のインボイス制度の導入はまさにこの懸念が的中している。
 大綱でいう事務負担の軽減は、「保存がなくとも」仕入税額控除を認めるとしているだけで、インボイスの確認を省略するものであるかどうかは不明である。いずれにせよ対象事業者となるかどうかの判定や会計処理などを考えると、仕入税額控除に対する取扱いに不公平が生じるうえ、確認作業を含めた事務負担についてはさらに大きな混乱を招くだけである。

 以上、令和5年度税制改正大綱における消費税インボイス制度の「激変緩和措置」に断固反対するとともに、消費税インボイス制度の中止を強く求める。

2022年12月28日 東京税経新人会 幹事会一同