✤東京税経新人会結成
東京税経新人会は、1957(昭和32)年6月9日、それまで日本の税制・税務行政の民主化などを目指し活動を行ってきた民主経理団、二・一会、金曜会などの団体に所属する有志が集まり、それら団体の先進的、民主的な精神を受け継いで「税経新人会」として誕生しました。税経新人会は機関紙「税経新報」(1958年8月12日創刊)を通じてその主張を展開し、先進的・民主的な活動を行う中で一定の地歩を固め、そうした民主的な活動の分野においては常に先進的、かつ指導的な役割を果たしてきました。税経新人会の活動は、納税者と課税庁が鋭く対立する厳しい情勢の中で開始され、今に至っています。そうした中で培われた質問検査権に対する理論と実践は、税経新人会の活動における中心的課題の一つとして位置づけられています。
「東京税経新人会」の名称を用いることとなったのは、全国各地に地域新人会が創設され、「税経新人会全国協議会」が結成された1965年6月からとなります。当会は、結成以来、平和と民主主義・基本的人権の尊重を定めた日本国憲法の国民の諸権利を実現するために、自らの職業を通じて税制・税務行政・税理士制度の民主化の旗を掲げて、税理士業界団体にとどまらず中小企業者団体や労働組合などの民主団体、税法研究者等と連携・協力し、時々の課題に果敢に取り組んできました。
以下、東京税経新人会の活動の歴史をご紹介させていただきます。なお、他の地域税経新人会も以下の活動に参加していることから、年表上「税経新人会」と表記させていただきます。
✤ 1961(昭和36)年 国税通則法制定に反対する運動
当時大蔵省(現財務省)より提案されようとしていた国税通則法(案)には①実質課税の原則、②記帳義務、③守秘義務解除、④資料提出義務違反への過怠税、⑤無申告脱税犯などの大きな問題点が盛り込まれていました。税経新人会はこうした問題点について労働組合や民主団体での講師活動を通じて、反対運動の輪を広げていきました。こうした活動は東京税理士会へも影響を与え、同会は国会に対して「法案の上程は時期尚早の申し入れをする」こととなりました。結果、前掲(①~⑤)項目の提案を断念した国税通則法が提案されることとなり、同法は1962年4月に成立することとなりました。
✤1963(昭和38)年「三者協定」に対する税経新人会の主張
1963年10月に国税庁主導により日税連・青色申告会との「三者協定」が締結され、税理士会が小企業対策に従事(現在の確定申告無料相談)することとなりました。税経新人会としては官主導による小企業対策についての本質的な問題点を解明し、税理士会が自らの責任と負担で中小企業支援を行うべきであると主張し、東京税理士会の会長・理事・支部長などへ意見を提示しました。
✤ 1964(昭和39)年 税理士法改正案に反対する運動
1964年税理士法改正案が提出されましたが、翌年審議未了で廃案となりました。この改正での問題点は、税務行政経験者への税理士資格認定と一般試験制度における科目合格制度の廃止の二点でした。税理士会は無試験資格認定制度に総力を挙げて反対し、連日国会陳情が行われました。税経新人会も会員事務所に勤務する受験生を中心に反対組織を結成。国会内外で議員へ訴えかけ、結果として科目別合格制度の維持に成功しました。
✤ 1979(昭和54)年 大平内閣一般消費税導入への反対運動
大平内閣は総選挙で一般消費税導入を訴えましたが、国民の反対が強く投票日直前に導入を撤回。税経新人会も反対運動を展開し世論形成に貢献しました。
✤ 1980(昭和55)年 税理士法改正案に反対する運動
1980年の税理士法改正案では再度科目別合格制度の廃止が提案される予定となっていましたが、その動きを察知した税経新人会傘下の受験研究会に参加する税理士試験受験者が税理士試験制度改悪反対全国受験者連絡会を組織し、国会議員陳情・受験校でのビラ配布等により反対運動を展開。これにより同改正法案への科目別合格制度廃止を盛り込むことを断念させました。
✤ 牛島税理士訴訟への支援
1980年の税理士法改正に際しては「カネで法案を買う」という批判をあびた税理士政治連盟による政治献金事件が発生し、税理士法改正運動史上の汚点を残すこととなりました。当時九州税経新人会に所属していた故牛島昭三会員は、税理士法改正のための特別会費拠出を拒否したことで南九州税理士会から選挙権・被選挙権を奪われ、これを不服とした牛島会員がその措置の取消しを求めて裁判を闘いました。税経新人会は牛島会員の裁判闘争を積極的に支え、1996年に最高裁で画期的な違憲判決を勝ち取ることに貢献しました。
✤ 1986(昭和61)年 中曽根内閣売上税導入への反対運動
大平内閣の一般消費税導入に失敗した政府は中曽根内閣のもと、名称を売上税と替え大型間接税の導入を図りました。しかし、反対の声は流通業界を巻き込み国民的なうねりとなって列島騒然たる状況を創り出し、その導入を断念させました。税経新人会としては、一貫した大型間接税導入反対の立場から、各地での講師活動や他団体とも連携した反対活動を展開しました。
✤ 1988(昭和63)年 竹下内閣消費税導入への反対運動
竹下内閣により消費税法案が提出され、1988年12月国会で成立。翌年4月導入されることとなりました。税経新人会は、消費税の導入については逆進性の強い生活費への課税となること、中小事業者は転嫁できずに身銭を切らざるを得ないなどの問題点があることを指摘し、消費税導入には一貫して反対の立場を示してきました。反対運動においては多くの会員が講師活動に参加し、反対世論の形成に貢献してきました。
✤ 1997(平成9)年 橋本内閣による消費税増税(3⇒5%)への反対運動
「小さく生んで大きく育てる」財務省の思惑に沿うかのように増税が実施されました。税経新人会としては消費税の問題点を訴え、反対署名活動などを実施しました。
✤ 2011(平成23)年 国税通則法改正案に対する研究と提言
2011年12月に国税通則法が50年ぶりに大幅改定されることとなりました。当初案では不十分なものではあるものの納税者権利憲章に関する部分が盛り込まれていましたが、その後、その憲章部分でさえ削除され、質問検査権が強化される内容へと改悪されてしまいました。調査の事前通知など一定の手続き項目が法定化された点は評価されますが、「納税者の権利を擁護する」ための規定とはなっていません。税経新人会としてはこの改正に対して勉強会や反対集会、署名活動を展開し、多くの議論(改定に関する賛否両論が会員内でも議論されました)が交わされ研究が進められました。
✤ 2012(平成24)年 消費税増税(5⇒8%)への反対運動
2012年8月、民主党・自民党・公明党の3党合意による消費税増税法案が成立し、2014年4月より8%、2015年10月には10%への増税が決定されました。税経新人会はかねてから消費税に関しては反対の立場をとっており、当時も低所得者への負担が大きくなり逆進性が高いこと、納税者となる事業者においても経済的な立場によって価格への転嫁が困難となり、中小事業者ほど不利益を被ることなどをあげ、消費税が不公平な税制である点を指摘し反対し続けてきました。
✤ 2019(令和1)年 消費税増税(8⇒10%)への反対運動
2015年10月に予定されていた消費税率10%への増税が安倍内閣の下、二度にわたって延期され、2019年10月からの増税が決定されました。8%への増税で景気が後退したことで増税のタイミングを見直さざるを得なくなったことによるものです。税経新人会では当初から増税の後に景気が後退すること、従前からの指摘のとおり逆進性の問題、中小企業の実質的転嫁不可能の問題、法人税減税の穴埋めにされている実態等を指摘し、増税を中止するよう訴えかけていきました。
✤ 2023(令和5)年3月税理士法改正(税務相談停止命令制度)に反対する意見書
2023年3月に税理士法の一部改正が成立しました。同改正には税務相談停止命令制度の規定が盛り込まれており、税経新人会としてはこの制度について自主申告運動を弾圧することに利用される危険性を説き、同法案について反対の意見書を提出しました。法案は成立してしまいましたが、引き続き立法趣旨に反する弾圧利用がされていないかの監視活動が必要となります。
✤2023(令和5)年10月 インボイス制度導入への反対運動
2019年10月に実施された消費税率10%への増税では、複数税率制度が導入され、これに伴いインボイス制度(適格請求書保存方式)の導入が決定され、導入は制度移行への準備期間として4年後の2023年10月1日からとされていました。税経新人会ではインボイス制度が、消費税導入当初に設けられた課税負担・事務負担に耐えがたい小規模事業者を救済するための免税制度を実質的に崩壊させる制度であること、消費税の計算方法に帳簿方式を継続採用している以上「インボイスは不要」であること等を指摘し、「制度の中止」を目指し反対運動を展開。署名活動を中心に他団体と連携して国会議員陳情やインボイス制度に関する問題点を理解してもらうための講師派遣などを実施しました。