政府は、2025年3月7日日本学術会議法案を閣議決定し国会に提出し、4月18日から衆院本会議で審議が開始された。
学術会議は戦前、学術研究が戦争政策に協力させられた歴史の反省から、「学問の自由」を保障する日本国憲法のもと1949年1月「科学が文化国家の基礎」であり、「平和的復興、人類社会の福祉に貢献し、世界の学界と提携して学術の進歩に寄与する」(前文)ことを使命として発足した。以来、運営は、国家の財政支出によるも、活動面では、政府からの独立、および会員選考における自主性・独立性を保つ、国の「特別の機関」として活動してきた。
ところが2020年10月、菅首相(当時)は学術会議が推薦した会員の内、6名の任命を拒否するとともに、学術会議そのものの改変を検討し、それが、今回の日本学術会議法案として提出されている。この法案、は前文及び政府からの独立性を削除すると共に、学術会議を国の「特別の機関」から「特殊法人」に変え、首相任命による監事の監査、活動計画や自己評価に対する内閣府の評価委員会の関与、外部者による選定助言委員会や運営助言委員会の設置、会員選挙における政府の関与導入など、これまでの学術会議が持っていた独立性・自主性・自立性をすべて奪い、政府の意向に従う組織にする学術会議解体法案ともいうべきものである。
そもそも、菅首相の下で行われた6名の会員拒否は、第2次安倍政権の内部で2020年6月に決定されたものであることが、今日では明らかになっている。第2次安倍政権は戦後レジームの総決算、戦後の憲法体制転換を求めて内閣法制局長官、日銀総裁、NHK会長など国家機関として「独立性」を持った機関の人事に積極的に関与して自分の言いなりになる組織に改変しようとしてきたが、今回の学術会議解体法案もこうした流れの延長線上にあることは明白である。
特に2015年9月、安倍内閣のもと、憲法違反の集団的自衛権を認めるなど、日本を再び戦争の出来る国にする戦争法(安保法制)が成立して以降、学問を軍事研究に巻き込む「軍学共同」研究が推進されるようになった。これに対して学術会議は2017年に、これまで 1950年と1967年の二度にわたって発した「戦争(軍事)を目的にする研究」は「行わない」という声明を「継承する」という声明を発表してきた。
学術会議は、こうした平和にかかわる問題以外にも、私達市民生活に様々な貢献をしてきた。性的マイノリティの人々の権利保障、感染症対策や気候変動に伴う災害対策、子供の成育環境の改善、活力ある超高齢化社会の構築など、私達市民生活に関わる多くの問題について、学問的根拠にもとづく提言を政府に付度することなく発信してきた。
学術会議会長経験者6名や日本弁護士会連合会(会長声明)、多くの学術団体もこの法案に反対する意思表明を行っている。こうした多くの声にも関わらず、この法案が国会に上程されたことに対して、強い危惧をもつ。東京税経新人会は、この法案の廃案を強く求める。
2025年5月1日
東京税経新人会幹事会