今年3月28日、1人当たり4万円の定額減税の実施を盛り込んだ新年度・2024年度の税制改正関連法が、参議院本会議で可決・成立した。私たちは、今回の制度を「減税」でなく「給付」で行うことを要求する。
国税庁は、法案成立前の2024年1月30日に「給与等の源泉徴収事務に係る令和6年分所得税の定額減税のしかた」というパンフレットをホームページ上で公開し、3月にはその印刷物を事業者である納税者に郵送している。法案成立2月前にこれだけの準備をすることは前代未聞である。
問題は、今年6月に行う減税の事務について、事業者に複雑かつ多大な事務を課するという点である。今回の制度は、受給できる所得制限はあるが、納税の有無にかかわらず本来国民すべてが対象となるものであるので、所得税3万円住民税1万円計4万円に相当する金額は、国・市区町村の直接給付すべき性格のものである。これを事業者の源泉徴収事務の中で行わせることは筋違いであり、控除すべき所得税・住民税がない場合は、給付されることになっている。そうであれば、すべての額を、2020年4月に実施された「特別定額給付金」と同じ給付方式でなされるべきである。
さらにこの源泉徴収事務は、1度だけの事務で完結せず、各月の労働者の源泉所得税と相殺していくため、数回にわたり各人ごと相殺・未済を管理しなければならない。また住民税徴収・所得税予定納税のシステムの修正を余儀なくされる。民間・行政ともにも大きなコストが伴う。
このような事態を招いた原因は、岸田内閣が、2023年の年末調整・確定申告で実施する意思がなく、内閣支持率低下の回復策として、急きょ浮上したためである。2023年の年末調整・確定申告で物価上場による自然増税に対応した扶養控除・給与所得控除等の抜本的拡充等をしていれば、場当たり減税は避けられた。岸田政権・与党がいかに国民の生活状況について考えていないかである。
以上、私たち税理士は、今回の制度を「減税」でなく「給付」で行うことを重ねて要求する。
2024年4月1日 東京税経新人会 幹事会一同