東京税経新人会 第66回定期総会で、下記の決議ななされました。
7月8日に死去した安倍晋三元首相について、岸田首相は14日の記者会見で「国葬」を行うと発表した。そして22日の閣議で、9月27日に行うことを正式決定した。
私たち東京税経新人会は、安倍元首相に限らず、いかなる者の国葬にも反対する。
国葬とは、そもそも1926年(大正15年)に制定された勅令(天皇の命令)に定める制度であって、日本国憲法の発効によって、それまでの非民主的諸制度は失効し、法的な根拠が失われた。第二次大戦終了後、吉田元首相の国葬が行われたが、これ自体法的根拠はなく、権威による国民支配の継続、非民主主義の残滓(ざんし)である。
弔意というのは、誰に対するものであっても、弔意を示すかどうかも含めて、すべて内心の自由にかかわる問題であり、個人に対し、国家が弔意を求めたり、弔意を事実上強制したりすることは、あってはならないことである。国葬は、国が亡くなった者の「功績」を称賛し、特定の評価を国民に押し付けることに他ならない。
国葬の具体的な内容は明らかにされていない。しかし億単位の税金が使用されることは明白であり、新型コロナ禍にあって、財政として優先すべき課題・分野が多々ある中、多額の税金を使って行うということは二重の意味で容認できない。
岸田首相は、国葬とする理由について、「憲政史上最長の8年8カ月にわたり・・・内閣総理大臣の重責を担った」「日本経済の再生、日米関係を基軸とした外交の展開等の大きな実績を様々な分野で残された」「功績は誠にすばらしいものである」などをあげた。
これらについては何ら根拠なく、政府・自由民主党の一方的宣伝に過ぎない。「憲政史上最長」は、戦前最長であった桂太郎は国葬になっていない。また「日本経済の再生」については、2006年9月に発足した第一次安倍内閣から今日まで、国民の実質可処分所得は減少している。「日米関係を基軸にした外交の展開」については、歴代内閣で違憲とされてきた「集団的自衛権」(米国が攻撃されたときには自動的に参戦する)を閣議決定で合憲とした。
安倍元首相は、「桜を見る会」「森友・加計問題」では、当事者でありながら、説明・疑惑の責任を取らず、後者は、財務省官僚による「忖度」で公文書改ざんや記録の廃棄につながり、職員が自殺に追い込まれた。安倍元首相が指名・応援したとされる河井元法務大臣の妻の参議院選挙においては、大規模な買収が行われた。自民党本部から支出された1億5千万円が原資(元々税金)だが、安倍元首相・自民党の明確な説明はない。また自分に都合の良い人物を要職にする人事を連発し、「黒川検事総長」問題では国民から総反発を受けた。
以上を見ても、民主主義のルールをことごとくないがしろにしてきた当事者である。
今回の国葬の動きは、これまでの失政・悪政を「善政」だったとして評価を塗り替え、その政策の継続と強行のばねにしようという目論見に他ならない。
以上、政治利用されることが明白な国葬に断固反対し、実施中止を求める。以上決議する。
2022年7月30日東京税経新人会第66回定期総会