私たち税理士有志は2022年5月6日、「インボイス制度の中止を求める税理士の会」を結成し、「インボイス制度の中止を求める税理士の会アピール(案)」を41名の税理士で作成し、全国の税理士にそれへの賛同を呼びかけました。
 北は北海道から九州・沖縄まで全国各地で税理士事務を営む多くの税理士にアピールへの賛同を広げ、インボイス制度の中止を強く求めていきます。
 そこで、6月9日(木)国会内において記者会見を行い、「インボイス制度の中止を求める税理士の会アピール」を発表いたしました。アピールの全文は下記となります。
 また、 「インボイス制度の中止を求める税理士の会」 に賛同いただける税理士のかたは、
下記のURLから、ご回答ください。よろしくお願いいたします。

https://forms.gle/facs3RbvZpfjkNU99

インボイス制度の中止を求めるアピール(全文)

 消費税法における適格請求書等保存方式(いわゆる「インボイス制度」)が2023年10月1日より実施されることとなっています。インボイス制度が実施されると、日本経済における諸取引に大きな混乱をもたらし、日本経済発展の大きな障害になることは間違いありません。
 日本税理士会連合会は、かねてより軽減税率制度の廃止とともにインボイス制度の問題点を指摘し、軽減税率制度が導入されたとしても現行の区分記載請求書等保存方式により対応できるとしてインボイス制度の導入に反対をしてきました。また、日本商工会議所、全国商工団体連合会、全国青色申告会総連合、全国中小企業団体中央会など数多くの中小業者団体も、インボイス制度の廃止、見直し、凍結、中止などの意見を公表しています。
 私たち「インボイス制度の中止を求める税理士の会」は、次の理由によりインボイス制度の導入の中止を強く求めるものです。

(1) 事務負担の増加
 本来、税額の確定にあたる計算方法は申告納税制度を採用している以上、簡素であることが望ましいが、インボイス制度は新たに適格請求書の発行や点検、集計が必要となり、必要以上の課税の精緻を追求するあまり、事業者に過度な負担を生じさせることになります。我が国にとっての喫緊の課題となっている中小企業の事業承継を行うにあたりキーワードとなっている「生産性向上」に向けての取組みと相反する事務負担の増加と言えます。

(2) 免税事業者との取引
 免税事業者が適格請求書を発行できないことに伴い、取引の中止または不当な値下げ等により経営状態が圧迫されるおそれが指摘されています。
 2021年11月に日本商工会議所が公表した「消費税インボイス制度とバックオフィス業務のデジタル化等に関する実態調査結果について」(以下「日商調査結果」という。)によると、課税事業者の約2割超が「免税事業者との取引は(一切または一部)行わない」、「経過措置の間は取引を行う」と回答し、免税事業者との取引を見直す意向を示しています。また6割は「まだ分からない」との回答であり、今後、この傾向は強まることが予想されます。

(3) 免税点制度の形骸化
 「日商調査結果」によると既に2割の事業者が「課税事業者になる予定」と回答しており、一方で約5割の事業者が「まだ分からない」と回答。「廃業を検討する。」と回答する事業者も4%存在しています。
 免税事業者が、課税事業者を選択することにより(2)の解決を図ったとしても、新たな税負担を生じることになり、経営状態の悪化は避けられず、結果として、インボイス制度の導入は消費税における免税制度の形骸化に繋がり、
中小事業者の活力を阻害することになります。

(4) 日本経済を滅ぼすインボイス制度 
 「日商調査結果」によるとインボイス制度導入に向けた課題は、「そもそも制度が複雑でよく分からない」が4割超で最多。その他、「コロナで先行き不透明の中、制度を理解する余裕もない」といった声も。さらに、新型コロナウイルスの影響もあり、約6割の事業者がインボイス制度導入に向けて特段の準備を行っておらず、特に「売上高1千万円以下の事業者」では約7割超が何の準備もしていない状態となっており、小規模な事業者ほど、その傾向は顕著となっています。
 以上のとおり、インボイス制度の導入は、課税の精緻と引き換えに、中小事業者にとって大きな悪影響と混乱を及ぼすこととなります。さらに、税制が必要以上に商取引に介入することになります。加えて、免税事業者が課税事業者を選択することにより予測される税収増2480億円に対して、全事業者が負担するコストが非常に重く非効率であり、中小零細企業ほど負担が重くなっています。
「複数税率が導入されたもとで正確な消費税計算」という名目で導入されるインボイス制度ですが、現行の複数税率のもと、2年6ヶ月以上適正な消費税申告が行われており、インボイス制度導入の理由は破綻しています。
以上のような理由から、私たちは重ねてインボイス制度の導入を中止するよう求めるものです。

2022年6月9日
インボイス制度の中止を求める税理士の会